社長就任に当たって、昭和15年の創業以来70年近くにわたって浪速商工を支えていただいた多くのお取引先様、そして諸先輩並びに現社員の方々にまず感謝を申し上げます。これまでの長年の実績により築いてきた社会的信用、そしてすばらしいお取引様と豊富な人材に恵まれたこの会社を引き継げることは、本当に有難いことだと感じていますしその責任の重さに身の引き締まる思いです。
すでに使い古された感もありますが、現在の経済情勢は100年に一度とも言われる金融危機に伴う世界的な不況にさらされています。
ワイヤロープ業界はこれまで比較的景気動向に左右されにくいと考えられてきました。事実、バブル経済の崩壊直後もワイヤロープ需要はしばらく順調に推移し3年から5年程度は深刻な状態には至らなかったようです。逆に、その後 の“ITバブル”や“ミニバブル”とまでいわれた中国を中心とした新興工業国BRICsへの輸出に支えられた好景気も、ワイヤロープ業界にとってはその恩恵も限定的なものでした。
ところがその間、ワイヤロープの国内需要は平成3年をピークに下降線をたどり平成18年度にはピーク時の約半分にまで落ち込んでいます。昨年度は若干持ち直したようですが、それでもピーク時には遠く及びません。もともと需要が減少傾向にある中での今回の不況は、これまでになく速いペースでこの業界にも押し寄せてきているように感じます。また、セメント・生コンクリートをはじめとする建設資材関連や橋梁分野の状況はさらに深刻です。新築住宅の着工件数は金融危機前の約半分にまで激減し、公共事業も二次補正予算が実行できないままなおざりとなっています。
このような厳しい経営環境下、当社としてどう乗り切ってゆくべきかを考えましたが、即効性のある解決策はないように感じます。そして、このような時こそ基本に忠実に日々の仕事を誠実に行っていくことが重要である、と思い至りました。つまり、当社の強みである優れた製品とそれを供給していただいている仕入先様、並びに当然ですがそれをご支持いただいている多くのお得意先様との強い信頼関係の維持・発展、これに尽きると思います。
最近の報道では、会社組織の合理化を性急に進めるあまり社内外に不安感や不信感が広がってしまい、労働意欲の減退、コンプライアンス意識の低下、与信不安などが見受けられるようになってきているようです。さらに多くの職場で人間関係が希薄となり、相互の信頼感、一体感が低下し、積極的な参加・目的意識が失われてきているとの調査もあります。社内がこのような状態では、とてもではありませんがお取引先様との強い信頼関係など築けるはずもありませんし、信頼関係のないところに新しいビジネスチャンスも生まれません。幸いなことに当社ではこのようなことにはなっていませんが、もう一歩踏み込んでみることも必要かと感じています。
私は、対話からはじまる社員相互の信頼関係の醸成、目的意識の共有が必要不可欠であり、そこから生まれる共同体としての高度な一体感の構築が重要だと考えます。その上で取引先様すべてにとって、浪速商工がこれまで以上に信頼される会社、信頼に足る会社になれるように努めてまいります。
最後に、今日までの皆様のご厚情に対し、改めて心より御礼を申し上げますとともに、まだまだ若輩ではございますが皆様のお役に立てるよう精一杯頑張ってゆく所存でありますので、引き続きあたたかいご指導、ご鞭撻ならびにご支援を賜りますようお願い申し上げます。
平成二十一年二月